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獣になれない私たち / 伊藤沙莉

トランジットガールズの時点で彼女の存在を知ってはいた。早くも主役かと驚いていたが、それは私が彼女を知ってからの期間が短かっただけで本当は子役時代からコツコツ頑張っていた女優であることは後から知った。トランジットガールズもどちらかといえばMummy-Dの父親役の演技への興味の方が上だったが、結局どちらも大きな印象は残っていない。やはり私の中でも世間的にも認知度が上がったのは「ひよっこ」ではないだろうか。

 

悪く言えば主役型ではない女優。ビジュアルも声も万人受けはしないであろう。そしてひよっこから付いてしまった早口でまくしたてる強めのキャラの印象。近年カメレオン俳優なる幅広い演技が出来る人を形容する言葉が見られるが、彼女の場合ここ1年はこのキャラ設定で1点突破のイメージ。今のところ飽きずに見れている。むしろいつも痛快で各ドラマに彼女がいることが1種のスパイスのようになってくる。ときには優柔不断なキャラクターを一刀両断したり、視聴者の気持ちの代弁者だったりとドラマを見る側のストレスを軽減してくれる存在となっている。

 

今回の松任谷夢子も少人数では饒舌ではあるが、大勢の前ではしゃべれないというキャラクターで面倒は嫌い、主人公晶のストレスの一端になっている。同じ職場にいたら間違いなく避けたい人物。ただ強引に良く言えば合理主義者。こんな人ばかりを集めたら仕事は偏りなくまわるような気がしないでもない。そんな松任谷さんがキレた第6話はまさに女性たちの代弁者のようだった。女の浮気はだらしなくて男の浮気は甲斐性に見られるハンデは世の中に確かにある。日本の遅れを最も象徴している部分ではないだろうか。松任谷さん的には個人的な怒りだとしても、自然と世の中への投げかけになっていて共感を得ているようだ。

 

伊藤沙莉という女優の本領はまだ分からないが、少なくともこの饒舌なキレキャラにおいては今彼女を超える人はいないと思う。早口でも聞き取りやすいし絶妙にムカつかせる。泉ピン子や鈴木砂羽系と言ってしまえば簡単だが彼女の演技は目を引く。見た目のせいか声質のためか、それとも演技力か。替えのきかないポジションを勝ち得た彼女の今後の作品もとても楽しみである。

 

第6話で晶と京谷の会社が繋がったり恒星と朱里も交わってしまったりでストーリーはどうなっていくのか、予想がしにくくてよい。